最近、怒りぽくなったなと思う。自分も、世間も。

特に、他人の「発言」に対する怒りの沸点低下が、顕著であるように思う。

そうした、自分や他人の怒りが、どのように起きているのかを冷静になった後に振り返ると、自分の脳がまるでGoogleやYahooのような「検索エンジン」化していることを感じる。

つまり、相手や誰かの発言、ないしはその発言を要約した記事の中に、怒りを惹起するキーワードがあるだけで、途端にカチンときてしまうのである。その発言の背景や、前後の文脈など関係なく。

どこで読んだのかは忘れてしまったが、とある専門家が、スマホの使い過ぎにより、現代人の脳が「AI化」していると述べていた。 ここでは、AIを賢くないものの代表として取り上げている。

AIは、少なくとも現時点では、「文脈」を読むことはできない。ベースとなるのは学習したキーワードとその組み合わせのパターンで、同じ言葉が文脈によってまるで異なる意味になるような、人間だけが使いこなせる言葉の機微などは、到底理解できない。そもそも、AIは理解などしない。インプットに対して、神経型ネットワークが算出したアウトプットを吐き出すだけである。

現代人のAI化とは、まるでそんな「賢くない」AIのように、長い文章の中でキーワードだけを拾って、「こいつの発言は白だ、黒だ」と二値化した判断しかできない、短絡的思考をする人間を皮肉った比喩である。


その本を読んだときは「気をつけねば」と思った程度だったが、どうも人ごとではないと感じるのが、最近の自分である。そして、世間である。


自分は、博士課程の頃から、漫才師の爆笑問題が好きである。彼らのくだらない漫才とラジオに、うつ状態でどん底にいた自分が救われた時からである。

その爆笑問題の太田光が、連日のように「炎上」していると言う。炎上の理由は、「旧統一教会を擁護している」からだと言う。確かに、その指摘をする記事を読むと、発言のカギカッコつきで、「信者を救わねばならない」などと書いてある。 AI化した人間が読んだら、これはキーワード検索でアウトである。怒るだろう。

しかし、太田光本人の発言を、そのテレビ番組を見て、最初から最後まで読むと、彼が言っているのは「マインドコントロールされた信者の扱いをどうするのかを考えねばならない」という主旨で(そもそも主旨を拾うのも難しい難解な発言)、救わねばならないとは言っていないことが分かる。しかし、キーワードの「信者」「無視できない」などをつなげば、記事は「キーワード上は」嘘を言っていない。

キーワード検索と、140字のつぶやき投稿と、0.1秒で伝わる「映える」メディアにしか反応できない現代人のAI脳に、太田の発言が「擁護でも糾弾でもない」グレーで多面的なところにあることを読む力は、もはやないのだろう。


「忙しい現代人」という言葉は、僕が物心がついたころからあった。しかしあの頃は、スケジュールの忙しさを指していた。

現代の忙しさは、氾濫する情報の捨象と吸収に追われる忙しさである。ヤフーニュース以上に長い文章を読む時間はないし、YouTubeで画像と音声で活字なしで3分で教えてくれるならそちらに飛びつきたい。

忙しいAI型の現代人は、親指で画面をスワイプして、0.1秒で白黒が分かる記事タイトルとサムネだけに反応して、キーワードだけを拾って、脳内のAIが反応したら怒り、炎上させれば良い。好きにすればいいと思う。
しかし、冒頭に述べたように、自分の最近の怒り方は、AI化の恐れは自分にもあることを警告している。他人事ではないのである。

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