PI (Principal Investigator. ラボの主宰者。教授や独立准教授など)になるか、企業の研究職として勤めるかという二項対立も極端が、もっと広くいうと、アカデミアかインダストリー(営利企業)か、という二択も極端というか視野狭窄なのだなと、今週気付かされた。

アメリカ細胞生物学会(ASCB)では、会員向けに、「メンター・メンティーのマッチングサービス」を無料で提供している。メンターが師、メンティーがその薫陶を受ける側である。

前からそのサービスの存在は知っていたのだが、今週ふと思い立って登録、メンターとなってくれる人を探した。
すると検索結果の中で、聞きなれない研究機関に属している人がいた。見てみると、その機関は"Non-Profit"、日本語で言うNPO法人であった。

さらに詳しく見てみると、どうやら、アカデミックな研究と、アウトリーチ(一般市民向けサイエンス講座)活動と、スタートアップ向けの技術提供を行う非営利団体とのことだった。


これは面白そうな人がいると思い、「メンターになってほしい」という申請を行った。すると2〜3時間でオッケーの返事が来た。
そして、「とりあえず話しようか」とあり、翌日、zoom越しに話をした。


会話では、まずは僕のことを話した。
サイエンスと社会の架け橋になるような仕事がしたいこと、学生時代に「サイエンス入り浸り」の狭い世界に嫌気がさし、コンサルに就職したこと、そこでの仕事は面白かったがサイエンスへの想いは消えず、再びアカデミアに戻りなんとか順調に前進していること、しかしこの先PIになることだけを見つめて進んで行くことに不安と違和感を感じること。

その上で、メンターの方(仮に"クリス"とする)が、自分の話をしてくれた。
彼は、ポスドクの頃に感じていたのは、「PIになることが成功、そうでなかった人は失敗」というアカデミアの風土はおかしいのではないか、ということだったそうだ。PIになっても、時間の大半を、パソコンの前での研究費申請書きに費やさねばならない、その生活は自分には合わないと。そう思っていたところに、たまたま、自分の電子顕微鏡の技術を買ってくれた人がいて、その人の縁で今のNPO組織に出会ったということだった。


クリスの話した仕事の中身は面白そうだった。普段は、自分で実験をして研究を進めるだけでなく、スタートアップなどに機器を貸して共同研究を行ったり、コミュニティ・カレッジと呼ばれる、研究設備があまり整っていない大学の学生にテーマと場所を提供して研究経験を積んでもらい、大学院進学への足がかりにしてもらう、といったサービスを行っているとのこと。


「アメリカにはこうした小さなNPOがたくさんある。ただ、あまり目立たないので、就職活動で探すのは難しい。また、小さいゆえに移民申請の取り扱いができず、君のような外国人を雇うことにはハードルはあるかもしれない」


アメリカン・ドリームという言葉があるが、僕にとって夢のようだなと思うのは、アメリカに存在する仕事の幅である。それは博士にとっても同様だ。


彼のいうように、小さなNPOは外国人にとっては入るのが難しいかもしれない。しかし今後も、クリスとは連絡を取りながら、PI以外の道も探していこうと思っている。

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