先日、とある地方国立大学で講師をしている、大学院時代の先輩から連絡があった。

「Developmental Cellに載った〜〜という論文を送ってほしい。うちの大学ではこの雑誌の論文が読めない」

びっくりした。
Developmental Cellとは、生命科学の世界では世界最高の科学雑誌Cell誌の「姉妹誌」であり、細胞生物学と発生生物学の世界ではNature Cell Biologyと並んで最も権威のある雑誌である。

言い換えれば、そこに載った論文は、自分の分野に近い論文であれば必ず目を通しておかなければならないような雑誌である。

それを読めないということは、プロ野球選手を目指す高校生なのにクライマックスシリーズが見れない、芸人志望なのにM1の準決勝が見れない、という状態に近い。


どうやら話を伺うと、その大学では財政難にあり、Developmental Cellのような超一流雑誌でも、購読料が払えないため読めないとのこと。
(一般にごく一部の雑誌を除き、科学雑誌に載った論文を読むには、大学または所属研究室が購読料を払っていなければならない)


Developmental Cellが読めないのだから、他の雑誌は推して知るべしだろう。

それでどうやって研究をしろと言うのだろうか。

先日、とあるポッドキャスト(リンクはこちら)を聴いていたら、UAE(アラブ首長国連邦)の科学担当大臣(女性!)が出て来て、「UAEが石油に頼れる時代はもうすぐ終わる。これからは科学とKnowledgeに基づく経済に移行する」と言っていた。
UAEは宇宙開発や医学研究を投資の柱に据えている。この間、ついに探査機を火星に到達させた。

依然として資源を持つ国が未来を見据えてこうまでしているのに、今も昔も資源がない国が、自国の若い将来のある研究者を当該分野の超一流雑誌の論文すら読めない状況に陥らせているとは。。。



最近、日本にいる知り合いから、こうした話を聞くことが多くなった。

自分はまだ次の行き先を考えるのは早いが、およそ研究を続けるのであれば、日本に戻るのは最悪の場合に限りたい、と思うようになってきたのはそうした情報に対する自然な感情である。

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